レンダリング設定の極意 (Pro Rendering Guide)
「雑誌のような高画質」を目指すなら、デフォルト設定のままではノイズが残ったり、質感が塗り絵のようになってしまいます。 ここでは、お使いのPCスペックに合わせた最適な設定レシピと、プロが実践する「フォトリアルのための3つの鉄則」を解説します。

現在のデフォルト設定は「プレビュー(確認)用」の軽い設定です。
どんなにライティングやマテリアルをこだわっても、この設定のままでは「ザラザラしたノイズ」が残るか、デノイザーによって「質感がのっぺり潰れる」可能性が高いです。
あなたのPCで目指せるフォトリアルのレベル
PCのVRAM容量によって、到達できる画質のレベルが異なります。 お使いのPCがどちらに該当するかを確認してください。
| 品質レベル | 対象VRAM | 代表的なGPU | 特徴 | 推奨用途 |
|---|---|---|---|---|
| 標準:バランス重視 | 6GB - 8GB | RTX 3060 RTX 4060 | デノイザー(AI)を活用し、 短時間で綺麗に仕上げます。 質感は少し丸まりますが、十分実用的です。 | 日常のプレゼン スタンダードPC |
| 極致:クオリティ重視 | 12GB 以上 | RTX 4070 Ti RTX 5070/5080 | デノイザーを切り、 膨大な計算でノイズを消します。 素材の微細な凹凸まで完全再現します。 | 本番カタログ ハイエンドPC |
初めての方へ
まずは「標準:バランス重視」から始めてください。VRAM 8GB以下のPCでも、十分に美しい画像が作れます。 慣れてきたら、サンプル数を少しずつ上げて「極致」レベルに挑戦しましょう。
設定レシピ:標準(バランス重視)
スタンダードPC(VRAM 6-8GB)で、効率よく高画質を狙う設定です。
✓ Rendering Mode: Pathtracer
✓ Resolution: 1920x1080 (FHD) または 3840x2160 (4K)
✓ Upscaler Algorithm: None (または FSR + Screen Percentage 100)
✓ Use Denoiser: ON ← これが重要
✓ Spatial Samples: 32
✓ Temporal Samples: 16 (合計 512サンプル)ポイント
- Denoiser ON でサンプル数が少なくてもノイズが消えます。
- 時間がかかる場合は、Temporal を
8に下げても OK(合計256サンプル)。 - VRAM 6GB以下 の場合は Resolution を FHD に下げてください。
レンダリング時間の目安
RTX 3060 で 4K の場合、約 3〜8分 程度です。FHD なら 1〜3分で完了します。
設定レシピ:極致(クオリティ重視)
ハイエンドPC(VRAM 12GB以上)専用。「空気感」や「素材のザラつき」まで完全再現する設定です。
✓ Rendering Mode: Pathtracer
✓ Resolution: 3840x2160 (4K)
✓ Upscaler Algorithm: None
✓ Use Denoiser: OFF ← これが最重要
✓ Spatial Samples: 64
✓ Temporal Samples: 32 (合計 2048サンプル)ポイント
- Denoiser OFF で質感の劣化を完全に防ぎます。
- 代わりに**膨大なサンプル数(2048)**でノイズを物理的に消します。
- コンクリートの細かい凹凸、木目の繊維まで完璧に再現されます。
VRAM不足に注意
VRAM 8GB以下のPCでこの設定を使うと、レンダリングが極端に遅くなったり、クラッシュする可能性があります。 まずは「標準」設定で試し、余裕があれば段階的にサンプル数を上げてください。
レンダリング時間の目安
RTX 4070 Ti で 4K の場合、約 10〜30分 かかります。しかし、出てくる画像は「写真と見分けがつかないレベル」になります。
なぜこの設定なのか?(3つの理論)
ここからは、上記のレシピがなぜ有効なのか、3つの要素を深掘りします。
1. Samples (サンプル数):画質の命
パストレーシング(Path Tracing)は、「光が何回跳ね返るか」を何度も計算して平均化する技術です。 計算回数(サンプル数)が多ければ多いほど、ノイズが消え、ガラスや金属、影のグラデーションが美しくなります。
デフォルト設定の問題点
Spatial Samples: 32
Temporal Samples: 2
合計: 32 × 2 = 64 サンプルこれでは圧倒的に足りません。 砂嵐のようなノイズが残ります。
サンプル数とデノイザーの関係
| 合計サンプル数 | Denoiser | 結果 |
|---|---|---|
| 64 〜 256 | ON(必須) | AIでノイズを消す。質感は少し丸まる。 |
| 512 | ON(推奨) | 標準的なフォトリアル。実用十分。 |
| 1024 | OFF でも可 | デノイザーなしでもノイズが少ない。 |
| 2048 | OFF(推奨) | ノイズ完全消滅。究極の質感。 |
プロの鉄則
時間がない → サンプル数を抑えて Denoiser ON
最高画質 → サンプル数を上げて Denoiser OFF
2. Denoiser (デノイザー):諸刃の剣
デノイザーは 「AIがノイズを無理やりぼかして消す」 機能です。
メリット
- サンプル数が少なくても、見た目が綺麗になる
- レンダリング時間を大幅に短縮できる
デメリット
- 「コンクリートの細かい凹凸」や「木目の繊維」が全部潰される
- プラスチックのようにツルツルになり、これがCGっぽさの原因
プロの鉄則
「サンプル数で殴って(高負荷)、デノイザーを切る」のが、最もリアルな質感を出す方法です。 ただし、時間がない場合は Denoiser ON + Samples 512 でも実用十分です。
3. Upscaler Algorithm:静止画では OFF
FSRやDLSSは、「低解像度でレンダリング → AIで拡大」 する技術です。
| 用途 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| ゲーム(リアルタイム) | ON | フレームレートを稼ぐために必須。 |
| 静止画(建築パース) | OFF | 細部がモヤモヤし、線がピクセルっぽくなる。 |
推奨設定
Upscaler Algorithm: None
Screen Percentage: 100 (必須)もし None が選択肢にない場合、FSR + Screen Percentage 100 でも大きな悪影響はありませんが、可能な限り OFF にしてください。
まとめ:迷ったらこれ
スタンダードPC(VRAM 6-8GB)
Pathtracer / 4K / Denoiser ON / Samples 512 / Upscaler None→ 3〜8分で、十分綺麗な画像が完成します。
ハイエンドPC(VRAM 12GB+)
Pathtracer / 4K / Denoiser OFF / Samples 2048 / Upscaler None→ 10〜30分かかりますが、プロ級の質感になります。
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